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仙台高等裁判所 昭和34年(ネ)381号 判決

青森県北津軽郡板柳町大字福野田字実田七三番地五号

控訴人

板柳映画劇場株式会社

右代表者代表取締役

三上忠太郎

古訴訟代理人弁護士

遺水祐四郎

同県五所川原市字柳町一番地

被控訴人

五所川原税務署長

菅原大也

右指定代理人検事

滝田薫

法務事務官 三浦鉄夫

大蔵事務官 東海林昭吉

右当事者間の差押処分取消請求控訴事件について、当裁判所は昭和三十四年十一月二十五日口頭弁論を終結して、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和三十一年九月五日控訴人に対してなした入場税税額七七八、六〇〇円納付期限同月六日十五時限りとする課税処分、並びにこれに基いて同月十日原判決添付目録記載の物件に対してなした差押処分は、これを取消す。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の陳述及び証拠の関係は、すべて原判決事実らんに記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

まず、訴の適否について判断する。

本訴が国税徴収法にいわゆる再調査の請求の目的となる処分の取消を求める訴であることは、控訴人の主張自体により明らかであるから、同法第三十一条の四第一項本文の規定により審査の決定を経由しなければ訴を提起できないのにかかわらず、控訴人がこれを経ずして訴を提起したことは、口頭弁論の全趣旨によつて明白である。

この点について控訴人は、本訴が同条第一項但書に該当する場合であると主張するけれども、その理由がないと認めるべきことは、原判決理由らんに記載のとりであるから、これを引用する。

なお控訴人は、課税処分等の無効を主張するかぎりにおいては再調査及び審査の決定を経ずに出訴できると主張するけれども、控訴人の本訴請求の趣旨が、課税処分等の無効確認を求めるものであればともかく、その取消を求める趣旨である以上、訴願前置の適用があるものというべく、従つて国税徴収法の規定による審査の決定を経由せずに提起した本訴は不適法といわなければならない。

結局、本訴は不適法として却下すべく、これと同趣旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。よつて、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 村上武 裁判官 上野正秋 裁判官 船田三雄)

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